プログラム
シンポジウム 1
シンポジウム 1
「医用イメージングの新潮流」
8月5日(月) 15:10-16:40
日本医用画像工学会(JAMIT)は,元々医用イメージング技術から出発した学会であり,CT,MRI,PETなどの医用イメージング技術は現在でも大きな進歩を続けています.
特に,AIや深層学習が出現して以来は,医用画像を生成するデータ処理である画像再構成が大きな変革を遂げていると言えます.そこで,本シンポジウムでは,医用イメージングに関連するデータ処理や画像再構成に関して最先端の研究を行っている4名の先生にご登壇いただき,CT,MRI,PETなどのデータ処理に関する最先端の話題に関してご講演をいただき,最新の医用イメージングに関して皆で勉強するようなシンポジウムを企画しました.
「散乱を用いたX線CT」
戸田 尚宏(愛知県立大学情報科学部情報科学科)
抄録:
X線CTは1970年代に実用化され,現在までに医療診断において不可欠な診断装置となっている.近年ではフォトンカウンティング方式やエネルギ分析による組織同定,さらには検出器の高感度化,高密度化による高精細・高速化が進行中である.また,コーンビーム化に伴い散乱線が増加するため,その除去のためのグリッドの精度も極めて高度化してきた.しかし,散乱線は対象物の存在により発生するため,対象物の情報を含む.この事から直接線と合わせて散乱線を利用する事で,CT再構成精度が向上し,被爆削減に繋げられるのではないかと期待される.本報告では散乱線を擾乱要素としてではなく,情報源として捉える観点からこれまでの研究を概観し,著者らによるモンテカルロシミュレーションによる逐次近似法を用いる方法や,ニューラルネットワークを用いた方法,及び理論的な根拠の構築に関する取り組みを紹介する.
「画像再構成の最新の話題」
橋本 雄幸(杏林大学保健学部診療放射線技術学科)
抄録:
画像再構成は,アルゴリズムとコンピュータの性能との両輪で進化してきました.Hounsfieldによって開発された最初のCTでは,2次元の再構成に9日間を要しました.1970年代後半に浮動小数点演算が自由に使えるようになると,フーリエ変換を使ったFBP法が主流になります.その後,徐々にコンピュータの性能が高くなり,逐次近似的な計算に耐えうるようになりました.逐次近似法に正則化などの技術を取り入れることで,ノイズ耐性などが向上し,逐次近似法は画像再構成の中心に躍り出ました.さらに,コンピュータ性能の向上により深層学習が登場し,現在ではその深層学習を利用した画像再構成が話題の中心になっています.その深層学習を用いた画像再構成法については詳しく解説したいと思います.近年,コンピュータの分野では量子コンピュータが大きな注目を浴びています.今後は,画像再構成の分野も量子コンピュータへの応用が重要な課題となるでしょう.
「深層学習を利用したMR画像再構成の新展開」
伊藤 聡志(宇都宮大学大学院工学研究科地域創成科学専攻情報電子オプティクスコース)
抄録:
圧縮センシング(CS)と,それに関連する画像科学はMRIの高速化(CS-MRI)において新たな展開をもたらしたが,CS-MRIは比較的長い再構成時間を必要とすること,再構成パラメータやスパース化関数は,経験的に選択されることが多いことなどの課題があった.
深層学習画像再構成(DLR)は,前述の解決に有望な方法として登場し,すでに十有余年が経過している.様々な方法が提案されてきたが,DRLは大別すると再構成のフレームワークとその入出力信号に基づきデータ駆動型End-to-end学習と物理・モデルUnrolling型学習の2種類に分類される.それぞれの方法は,解に至る方法の違いから得られる再構成像,学習に要する画像枚数,学習時間などが異なる特徴がある.本シンポジウムでは,DRLの再構成法を体系的に分類しつつ,各方法の特徴を説明する.
「PETの現状 ー 装置開発及び臨床応用」
木村 裕一(近畿大学情報学部情報学科/近畿大学情報学研究所)
抄録:
PETは,定量値が得られるが故に,様々な生体機能の画像化が可能であるという特徴を有するモダリティーである.一方で,その測定原理上,他のモダリティーと比較して空間分解能が劣るという欠点がある.そこで本講演では,PETの装置開発の現状の説明を通して,空間分解能が向上したPET画像をご覧頂く.又,生体機能の画像化が可能であるという特徴故に,PETは臨床に様々に応用されているが,その現状についても説明する.